今は友達でもいい




それは、ある日の事。
雲ひとつない青空。
授業も終了し、グランドからは運動部の掛け声が遠く聞こえていた。

大きく開かれた窓から夏独特のまとわりつく風が入ってくる。

そんな平和に満ちた時間がゆっくりと過ぎている文芸部の部室内。

平和の定義が確実に甘くなってしまっているメンバーが各々好きな事をしていた。
それは、まさにこの部室の主と言ってしまっていいだろう、ハルヒがまだ来ていないからで。
長門はいつもの様に窓際で固定され本を読み。
お茶を配り終えた朝比奈みくるは珍しく椅子に座っていた。
ぼんやりと目の前で繰り広げられているボードゲームを眺めていた。
そんなボードゲームをプレイしているのは、古泉と彼。
これと言った会話もなく、ただ音だけが部室内にこだましていた。


そんな中やってくるのは当然、ハルヒで。

「遅くなってゴメン!皆もう揃ってるのね!感心感心」

なんて、謝る気があるのかどうか怪しい挨拶をしながらバターン!!と騒々しく入ってきた。
ところが、そんなハルヒも今日は特に会議をしなくてはならない内容もなく、
これといって思いつく楽しいこと、もなかったらしく。
「みくるちゃん、喉渇いちゃった!お茶ちょうだい」
そう言葉を発した後は、静かなものだった。



長門がめくるページの音

ハルヒがマウスをクリックする音

朝比奈みくるが体を動かす際になる椅子のきしみ。

そして、オセロの石がおかれる音…


それ以外にこれと言って音のない部室内。
そんな時間が5分か10分か…はたまた1時間か。
とにかく、しばらくした後ハルヒがガタン!と勢いよく立ち上がった。

「今日は暇ね。もういいや、解散!」
その言葉から、部室のドアがバタンと閉まるまで…またもや時間は不明だけれども
10秒か30秒か…とにかくあっという間に彼女は立ち去っていった。

その後に続くパタンという本を閉じる音。
そして静かに出て行く長門。
しばらくたってから着替えた朝比奈みくるが2人に近づいていく。
「まだ帰らないんですか?」
「そうですね…どうしますか、コレ」
「もうちょっとじゃねえか。勝負つくまでやったらいい。…朝比奈さん、もう帰りますか?」
「は、はい…お先に失礼しますね」
ニッコリ、と彼曰く天使の笑顔を浮かべた朝比奈みくるがドアの向こうに消えた。



カチッ

所詮、オセロ。
テレビで見る囲碁や将棋の様ないい音はしたりしない。
カチカチと続く音に、ボードの上は白と黒で埋まっていく。

「…お前、今度から黒持つか?」
「いえ。これで十分ですよ」
「何が十分なんだか、よく分からんが…はあ」

大げさに吐かれるため息に、古泉がふふ、と笑った。

「なんだ、気色悪い」
「いえ、大した事ではないのですが…」
言ってみろよ、と彼の目線が続きを促す。
「あなたは、僕に勝ってほしいのですか?」

カチ

白い石が、残り少なくなったスペースに置かれる。
長い指が間にある黒をひっくりかえそうと伸ばされる。

「…違う」
「は?」

伸ばされた手が掴まれて、古泉が前を向くと彼がうつむいていた。
「…もうちょっと考えろ。どうせお前の負けは決定だが本当にそこでいいのか?」
「はあ…」
古泉が盤上をもう一度眺める。
そこは、どう見ても有利な場所ではなく、それどころかこれ以上に黒に有利になる場所であった。
「ああ…本当ですね。僕はどうもこういう事を見逃しがちですよね」
置き直していいぞ、と彼が言うので古泉が違う場所へと白を移動させる。


クルクルと石をひっくりかえしている古泉の手がぴたりと止まる。
彼を見ればまだうつむいたままで。

「先ほどの質問は答えを頂けないのでしょうか」
「何がだ」
「あなたは負けたいんですか」

カチ、と最後の石がひっくりかえされる。
これで次は彼のターン。
黒の石が手の中でクルクル回っている。
しばらくの沈黙の後、やっと置かれた黒は先ほど白があった場所。
「…そこでいいんですか?ひとつしか」
「ここから全ての空欄に白を置いた所で俺の勝ちは揺るがないからな」

カチ、とひとつだけひっくり返る石。

白が置かれるはずだった場所に収まった黒。
そうやっていつだってあなたは自然と入り込んでくる。





「俺は、もう少しやりがいのあるゲームがしたいだけだ」

そんな言葉が聞けたのは、日が翳ってきた帰り道のこと。



初…じゃないけどまじめな古キョンは初?うぅ〜む…掴みどころのない話を書いてしまいましたよ…まあ日常か な …
もっとラブラブを書きたいよ〜!!