嫌いになる努力も無駄






いつもの様に部室の扉を開けると、そこにいたのは古泉ひとり。
どうりでやけに静かだと思った。

しかも、古泉は寝ているらしく机につっぷしている。
珍しい事もあるものだ、と起こさない様にそっと扉を閉めた。



「…こんにちは」

後ろから聞こえてきた声にビクリとなる。
唯一いる人間が寝ていると思い込んでいたのだから、無理はないと思うのだが。

笑いを堪えている様な顔の古泉がムカつく。





誰もいない部室に一人でいるというのは大変に退屈なもので、
机に伏せて休憩していた。
ふと聞こえてきた足音が彼のものだと分かったから、そのまま寝たふりをしていた。

彼は、どうやって起こしてくれるのかほんの少しだけ楽しみにしながら。



ガチャ、といつもの様に開いた扉。
少し戸惑う様なかすかな音が聞こえた。

そして、今度は音が立たないように閉められる扉。


きっとこのままにしていたら誰か…それは涼宮さんに間違いない…が来るまで彼は僕を寝させてくれるのだろう。
先に来たのが長門さんや朝比奈さんなら、口の前にそっと指を一本だけ立てて。
無表情の長門さんがゆっくりと頷く。
朝比奈さんはきっと彼と同じ様に眠っている僕を珍しいと少し驚いた顔をした後にとても優しい顔をして笑う。

ああ、現実でもないのに
こんなにリアルに想像してしまう自分がおかしい。


でも。

やっぱり僕はあなたと向き合っていたい。



ゆっくりと顔を上げると、あなたはまだ扉に向かったまま。
「…こんにちは」

静かにかけられた僕の声にビックリして振り返る彼が何だか可愛くて。

近寄って抱きしめたくなって

とても困った。





「具合でも悪いのか」
「いえ。健康体そのものですよ」

ニコニコと何やら上機嫌な古泉の前にドスンと腰かける。
扉をあんなに慎重にしめたんだ。
その反動でうるさくても文句は言われまい。

「寝不足か?」
「そんな事もないですね」

だったら何でだよ、と聞くと少し困った様に笑いながら


寂しかったんです


なんて言われた日にゃ。

怒るに怒れないじゃないか。



「…驚かせるな」
「ええ、以後気をつけますね」

あなたの反応が見たかったんですよ、と今度は綺麗な笑顔で言われる。





お前なんか嫌いだ、と何度も思ったし口にした事もあったかと思う。

でも、
そんな顔や台詞を聞いていたらきっとそれは真実にはならない。


「頑張れって事か?」
は?と雑誌を読んでいた古泉が顔を上げた。

だからさ。





お前を嫌いになるには、相当の努力が必要ってことさ。




雰囲気を読んで頂けるとありがたいです…もう!この二人はどうしてこうもラブラブなんだろう!!(笑)