甘いものな〜んだ




「チャーリー!チャーリー!!」

今日も、広い工場に工場主ウォンカの声が響く。
ウンパ・ルンパ達はいつもの事だと分かりきっているので、もう顔を上げる者も、目線を送る者もいない。
最初の頃はものめずらしさに集まったりしていたのだけれど。


呼ばれた主、チャーリーは少し離れた所で気付き、ここだよ!と返事をする。
チャーリーもまた、毎日の事なので、何事かと大騒ぎをしたりしない。

バタバタと近づいてくる足音。
走ったせいで真っ赤になった顔でチャーリーの前に現れる。
チャーリーの姿を目にした途端に、赤い顔のままニィッコリと笑うものだから、チャーリーはそれが可笑しくて仕方ない。

それが、ここチョコレート工場での日常茶飯事だった。





「それで、今日は何?」
「ああ、聞いてくれたまえ!僕はとても素晴らしいものを開発したよ!」
「何?」
「うん、これだ!」

ジャン!と効果音を口で言って、チャーリーの目の前に差し出したのは、一枚の手鏡だった。

「…何、これ?チョコレートなの?」
「まさかまさか。これはね、望むものが映し出される鏡なんだよ」
「本当!?すごい!」
パッと顔を輝かせるチャーリーに、ウォンカも大満足。
ふふふ、と笑いながら手鏡を得意そうに振り回していた。
「ねえねえ、僕にも見せてよ」
「これかい?これはまだ試作段階でね。まだひとつのものしか映し出さないんだよ…これから改良の余地はまだまだある」
「ふぅん、何を映し出しているの?」

ひょい、と覗き込んだチャーリーの目に映ったのは普通の鏡。
覗き込んでいるチャーリーが写っている。

「Mr.ウォンカ、普通の鏡じゃないか。壊れたんじゃない?」
「いやいや、そんな事はないよ。これは確かに正常に動いているよ」
うふふ、と本当に大満足なウォンカを、チャーリーは不思議そうに見つめた。

「…ねえ、何が映っているというのさ」
「ふむ、確かに君には分かりにくいかもしれないね」
う〜ん、と考え込むウォンカに、チャーリーはムッとして言い返した。
「それは僕が子供だから?それとも僕にMr.ウォンカ程の知識がないって意味?」
キツイ口調で一気にまくし立てると、ウォンカが驚いて手をパタパタと振った。
「違うよ!チャーリー!君ほど優秀で魅力的な人間はいないよ!」
「…じゃあ、なんで?」
「そうだねぇ…うん、チャーリー、君、そこから後ろ向きに下がって」
「後ろ向きに?」
「そう、鏡が見える?」

少しずつ下がるチャーリーに見える様に、ウォンカが鏡を反対向きに持つ。
チャーリーの目には、確かに鏡が見えた。
自分の姿が映った鏡が。

「うん、見えてるけど…」
「どんどん下がって…そう、何か気付かない?」
ウォンカと鏡から離れたチャーリーの目に映るのは鏡。
離れたはずなのに、先ほどと同じサイズで映っている自分の姿。

「…僕」

「ご名答〜!!」
呆然とするチャーリーに、パタパタと近づいてきて、ウォンカはまくし立てる。

「すごいだろう!?これで、僕は毎日君を探さなくて済むんだよ!鏡を見れば君が映っている!その背景を見れば、どこにいるのか分かるって寸法さ!そしたら、僕は後ろからそっと近づいて、アコガレの『だ〜れだ♪』が出来る訳さ!ああ!考えただけでゾクゾクするよ!!」

「………僕は考えただけで頭痛がするよ」
ボソリと小声で言い捨てると、フラフラとその場を去ろうとする。
相変わらず興奮しているウォンカを置いて。


数歩行った所で、もうウォンカが気付く。
「チャーリー!」
バタバタと近づいてくる足音。
振り返る前に、ギュウとウォンカの腕の中。



やれやれ、とため息をついた子供と。
嬉しそうにその子供を抱きしめる大人。

何だか立場が逆なんじゃないの、と工場中のウンパ・ルンパが思ったとか思わないとか。





それで。
毎日、工場に響いていた声が消えたかというと。


「チャーリー!チャーリー!!」
相変わらずの日々。

「Mr.ウォンカ!アナタ、その鏡で僕を見つけてくれるんじゃなかったの!?」

「ああ、それがね!チャーリー!聞いてくれたまえ!鏡を見ると、君が映っているじゃないか。すると、目はもう君に釘付けなんだよ!暫く見つめていると、もう君に会いたくて。君の声が聞きたくて。君に直接触りたくて。もう、いてもたってもいられなくて、背景を見てその場所を予想するなんて芸当、出来そうにないんだよ!!」

「……それで、呼んだ方が早いって?」
「そう!ああ、やっぱり君は賢いよ!」



「………………あはは」
棒読みで笑い声を呟いたチャーリー。
物陰でウンパ・ルンパ達は思った。

大体、こんな事になると思っていたと。



チョコレート工場デス!んもう!大好きです!!ちょっと口調を忘れてしまって、偽者ちっくですが…(^^;
また書きたいです!書きます!(本気?!)