君の声




広い工場内で、人を探すのは困難なもの。
いつだってチャーリーはウロウロしているウンパルンパ達を捕まえて、ウォンカの場所を訪ね歩いていた。

チョコの滝で見た、という情報を元に行ってみれば、今度は開発室で見た、という情報に。
いつだってすぐには捕まらないウォンカ。



今度だってあまり当てにしてはいけない、と期待せずに向かったナッツ選別室。
けれど、そこには目的の人物。
真っ赤な格好の人。

「Mr.ウォンカ!」
ほっとして叫ぶと、体がビクリと反応した。
慌てて振り向いたその顔はいつもの様に嬉しそうで。
「やあ!チャーリー!どうしたんだい?」
「探したんだよ、Mr.ウォンカ!あのね…」
新しいチョコの案を話そうと口を開きかけるが、何故かウォンカはう〜ん、と悩み始めてしまった。
「あの…ウォンカ?」
「それだよ!」
「えぇ?」
全く意味が分からなくて、聞き返すが、ウォンカはすっかり自分の世界に入ってしまって、
「うんそうだよ!」「絶対おかしいよ!」
とブツブツ言いながらその場をクルクルと回っていた。
「あの…何がおかしいの?」
「君が僕を呼ぶ時の名前さ!」


「…Mr.ウォンカ?」
「そう、君はなぜそんな他人行儀に呼ぶの?僕はフレンドリーに呼んでいるというのに!」
「…じゃあ、何て呼んで欲しいの?」
「えっ…そ、そうだね…ウ、ウィリー…とか」
ウォンカが困った時によくやる仕草。
顔を赤くして、手をモジモジと動かしている。

チャーリーはニヤッと笑うと、近くまで行って下から顔を覗きこむ。
ウォンカはビックリして、よろける様に後ずさった。
「な、何?」
「僕は話したい事があるからきたんだよ、ウィリー」
ニッコリ笑ってそう言うと、ウォンカの顔は真っ赤に。



「あのさ…チャーリー?」
「なあに?」
「その…呼び方は自由にしてくれて構わないのだけれど…」
「うん」
「出来たら、普段はいつもの様に呼んでくれないかな」
「何故?ウィリーが呼んでって言いだしたんだよ?」

クスクスと、チャーリーが呼ぶ。
その声に誘われたかの様に、ウォンカはチャーリーを抱きしめた。
「だって…何だかとてもドキドキしてしまうのだよ。チャーリーの声が僕の名を呼ぶとさ」
ボソボソと言うウォンカに、チャーリーの顔が緩む。


「僕もね」
「ん?」
「僕も、ウィリーが名前を呼んでくれる度にドキドキしているんだよ」

「チャーリー…!」

嬉しくなって、ウォンカはますます力を込めてチャーリーを抱きしめる。
大好きだよ、と耳元で囁いて。










「ところで、ウォンカ」
開発研究所に戻った2人は、早速チャーリーの新しい案を実践しようと
ウォンカが試験管に入っている怪しい紫の液体を振り回し、
チャーリーがビーカーに入った赤い液体をかき混ぜていた。
背中越しに聞こえた呼び声に、ん〜?とウォンカは返事をする。

「普段はウォンカと呼ぶ事はいいんだけど、じゃあどこでならウィリーと呼んでいいの?」

ガチャン!と響く試験管が割れる音。
チャーリーがその音にかき混ぜ棒を持ったまま振り向くと、また真っ赤になったウォンカが立ちすくんでいた。
その姿に、クスクスとチャーリーが笑う。
「チャーリー…からかっているのかい?」
「そんな事ある訳ないよ。だって大好きなウィリーなんだもの」


その場にしゃがみこんでしまったウォンカに、かき混ぜ棒片手に近寄ると、蚊のなく様な声で、ウォンカが懇願した。

「『仕事』中はウォンカと呼んでくれないかい…?」



当初の予定ではチャーリーが振り回される筈だったのに、ウォンカが振り回されてしまいました…!
何だか二人とも可愛いなv(馬鹿)