健やかなる時も…



「どうかしたのか?」
ポン、と後ろから声を掛けられて、レゴラスの体がビクリと動いた。
珍しい。
「…どうかしたのか?」
もう一度、全く同じ言葉を掛けてみた。
ゆっくりと振り返ったレゴラスの顔は蒼白で。
口がまたゆっくりと動いた。
声にはなっていなかったけれど、『な・に?』と言っているらしい。
「…ボ〜としてたから。何かあったのかと思っただけだよ」
何を見ていたのか気になって、レゴラスの隣まで歩を進める。
隣に立ってみたけれど、目の前に広がる景色はいつもと変わらないもの。
「…?」
「ギ、ムリ…」
「何だ?」
呼ばれて顔を上げれば、まだ白い顔をしているレゴラスがじぃっとこちらを見つめていた。
痛いほどの視線。
「ギムリ…」
2度目の呼びかけと共に、レゴラスは体を屈めてギムリをギュウと抱きしめた。
いつもなら真っ赤になって慌てふためくギムリも、こんなレゴラス相手では大人しい。
手持ちぶたさな両腕を、レゴラスの体に添えてポンポンと背中を撫でてやる。
「ギムリ…」
「ん…」
何度も、何度も呼びかける声に、ギムリも何も聞かずに応えている。
まるでうわ言の様にギムリの名を呼び続けるレゴラス。
何かあったのは一目瞭然。
ポンポン、と背中を何度も撫でてやりながら話をしてくれるのを待った。
「愛してる…」
「うん…」
「ずっと一緒に…いてくれる?」
「ずっと一緒にいるじゃないか」
「これからも」
じっと、ギムリを見つめてくる。またあの視線。
「出来うる限りはな…」
「ギムリと…ずっと一緒にいたい。ずっと…ずっと…」
きゅ、と再び抱きしめてくるレゴラス。
ソロリ、と抱きしめかえしてきたギムリにレゴラスの顔がやっと緩んだ。

「景色を…」
抱き合ったまま、どれほどの時間が経っただろう。
ポツリとレゴラスが口を開いた。
「景色を見ていると不安になる。毎日、毎日、変わらない景色なのに、でも確実に変化していっている。小さかった苗が大きな木に。緑に実が成り、枯れていく。毎日、毎日見ているとあまり気付かないものなのに…。ずっと、ずっと。この景色が続くと信じていたのに…」
見上げると、レゴラスはまた景色を見ていた。
空ろな瞳で。
まるで、そのまま消えてしまいそうで。
思わず、ギュッとレゴラスの服を掴む。それに視線を戻してきたレゴラスがニコリと笑う。
「ギムリも一緒だね…」
何も言えなかった。
永遠の命を持つ種族はエルフ族だけ。
何も分からなかった。
永遠という時の長さがもたらすもの。
そして、レゴラスが笑った意味も。

「100年経って、200年経って…何年経っても一緒にいるよ。…死がふたりを分かつまでね」
「ギムリ…」
「アンタに対して、永遠という言葉は使えない。私には、永遠という時間もない…」
レゴラスの顔を見上げる事が出来ず、溢れる雫を止める事も出来ず、ギムリはレゴラスの服に顔を埋めた。
エルフ独特の薄手の生地が、冷たく濡れる…。



唯一無二の宝物を、時間が僕から奪っていった…。
時間に愛されている僕らの種族。
だけど、僕はもういいよ。

唯一無二の宝物を、時間から取り返しに行くから。



暗ッ!っていうかスミマセン!!こんなの書いちゃってスミマセン!!今ブルーかもです…逃げます。探さないで下さい…