MISCAST 2



誰もが忘れてしまう様な小さな小さな国がありました。
そこを治めていた、剛毅な王様と美しいお妃様。ある日、待望の王子が産まれました。
その日は国中で大喜び。
王子はギムリと名づけられ、スクスクと育っていきました。

ところが、そんなある日。
お妃様が流行病で逝ってしまいました。
それからは王様とギムリは泣き暮らす毎日…。
けれど、それではいけないと感じた王様。早速新しい妃を連れてきました。
「さぁ、ギムリ。新しいお母さんだよ。今日からまた元気に過ごそうじゃないか」
「よろしく、ギムリ」
静かな笑いを浮かべる新しいお妃様はサルマンといいました。
美しく長い銀髪に、見事な髭。
少し危なげなおでこも、スラリと高い身長も、全てが魅力的な妃でした。
王様が、あっという間に虜になったのも頷けます。


ところが、このサルマン妃。とんでもない腹黒でした。
数年後、王様がまた流行病で逝ってしまうと、あっという間に城を自分の物に。
怪しげな生き物を沢山呼び寄せ、木を掘り返し、地下に工場の様なものを作り、せっせと実験を繰り返していました。
誰も止められないサルマンは、美しい王子をほかってはおきませんでした。
薄汚い服装をさせ、小間使いの仕事をさせておりました。

ある日。
サルマンの念願が叶って、怪しい地下工場に1匹の妖精が誕生しました。
『ラーツ』という名のその妖精は、世の中が分かる不思議な妖精でした。
「可愛い可愛い、私のラーツよ…この世で一番美しいのは誰だ?」
「サールマーァン…」
その答えを聞いて、サルマンはご満悦の様子でした。


さらに数年後。
ボロを着ていても、美しさを隠せなくなってきたギムリ王子。
相変わらず家事仕事をさせられて、手はボロボロになっていましたが、豊かなふわふわの髪も。可愛らしいみつ編みの髭も。時と共に美しくなっていく一方でした。
ラーツの答えも「ギムリも美しくなってきたけど、まだサルマン」と言った感じの答えになってきて、不機嫌なサルマンに城は大騒動でした。

そんなある日。
いつもの様に家事仕事をしていたギムリの前に、影が出来ました。
自分より大きなその影。
てっきり、サルマンが来たのだと思い慌てて顔をあげました。
けれど、そこに立っていたのは見知らぬ人でした。
美しい金の髪。長い長いその髪は、サラサラと流れる様な動きです。
真青な瞳に、白い肌。
そして、片手には真っ白な馬を引き連れていました。
「…誰?」
「それは、私がしたい質問だ…美しい王子よ…私の名前はレゴラス。闇の森の王子だ」
囁く様に名乗ると、膝をつき、ギムリの手にキスをします。
ギムリは家事でガサガサな自分の手が恥ずかしくて、真っ赤になって手を引っ込めました。
「美しい王子…私に名を教えてはくれないか…?」
滑らかな動きで、ギムリの頬へとレゴラスの手が伸びてきます。
人に触られる事になれていないギムリは、ますます真っ赤になって、必死になって逃げました。
「!待って!!」
何故逃げたのか、何故追いかけられるのか。
何も分からないまま、城に逃げ込み、扉に鍵をしてしまいます。
ドン!
扉の向こうで、レゴラスが叫びます。
「美しい王子よ!私は諦めたりなどしない!!」
ギムリの胸がドキドキと高鳴りました。
今までなかった感情に、ギムリは不思議でなりませんでした。
寝ても覚めても、頭にはレゴラスが…。
これが恋だと気付くには、ギムリは幼すぎました。


さて、ある日。日課の様にラーツのあの質問をしていたサルマン妃。
とんでもない答えを聞いてしまいます。
「一番美しぃ〜のはぁ〜、恋をしてぇ〜更に美しくなったぁギームリィ〜」
「な、何だと!?」
サルマン妃は、驚きに顔面蒼白です。
「すぐに、ギムリを始末しろ!」
青い顔をしながらも、ラーツの仲間、ウルクハイ達に抹殺命令を出しました。
ウルクハイ達は、ウォ〜!と地下工場を後にします…。


(略)


何とか逃げ出せたギムリは、森の中で迷子になってしまいました。
困り果てながらも、ウロウロしていると、小さな家を見つけました。
「ああ、これで休憩出来る」
疲れ果てたギムリは、中に入ろうとノックしました。
ところが、誰も返事をしません。
ソッとノブに手をかけると、キィ、とドアが開きました。
「ごめんくださ〜い。すみませ〜ん!」
ギムリは声を掛けてみたのですが、やはり返事はありません。
勝手に入るのは気がひけたのですが、もう体力も限界です。
フラフラと家にあがらせてもらいました。
フと机を見ると、美味しそうなスープが大量に置いてありました。
その途端、ギムリのお腹がグルグルとなりました。
ここの家は一体何人家族なんでしょう。とても大きなお鍋です。
疲れ果てていたギムリはスープを少し戴いて、さらには2階のベットで休む事にしました。
ベットは、小さなベットから大きなベットまで。
小さなベットはギムリには小さすぎ、大きなベットは大きすぎました。
「…あとで、謝ればよかろう。スープはまた作り直してあげよう…」
大きなベットに横になった途端、泥の様に眠るギムリでした。


「誰かが僕らのご飯を食べちゃった!」
「うん!確かに!!出掛ける前より数センチ減ってる!!」
バタバタバタ…
「誰かが僕らのボロミアのベットで寝ているよ!」
「本当だ!ずるい!ずるいよ!!」
「誰が誰のだぁ〜!」
大騒ぎの声に、ギムリは目が覚めました。
どうやら家の住人が帰ってきた様です。
とりあえず謝らなくては!と飛び起きたギムリの目の前には、4人の小人と3人の大きな人が立っていました。
「誰だね、お前さんは?」
大きな人のひとりが聞いてきます。
三角帽子に立派な髭。ズルズルとした洋服は、昔読んだ絵本の魔法使いそっくりです。
ギムリは、この人は信用出来る、と経緯を説明しました。
そして勝手に入ってしまった事を素直に謝りました。
それがよかったのか、それとも他の事情があったのか。
とにかくギムリはその不思議な7人の家に泊まれる事になりました。
「しかし…サルマンめ」
魔法使い…ガンダルフがそう呟いたのをギムリは気がつきませんでした。


(7人とのやりとりも略!すでに長いんだよ!この話!!)


城では、ウルクハイ達が無事戻ってきて、上機嫌なサルマン。
「さて…邪魔なギムリは始末した。これで一番美しいのは私だろう…さあ、ラーツよ。答えておくれ」
「森に逃げこんだぁギムリィ〜」
「何だと!?まだ生きているのか!?しつこい奴め!!」
サルマンは、もう人には任せておけぬ、と魔法の玉を覗き込みました。
自分の手で、始末をつけに行こうと居場所を突きとめるためでした。
そんなサルマンの目に飛び込んできたものは、思いもかけない映像。
「ガ!ガンダルフ!!」
サルマンの目がみるみるうちに輝いていきます。
「ああ、愛しのガンダルフ!!こんな所にいたのか!!」
ギムリの事は、記憶から消えてしまった様です。
サルマンは早速、城の中に作った研究所にこもり、惚れ薬を作りました。
「ふふ…これでガンダルフは私のもの…」
リンゴに思いっきりその惚れ薬を塗りつけ、イソイソと城を出て行きました。



「美味しいリンゴはいかがかな?」
真っ黒なローブを被ったおばあさんが真っ赤なリンゴを売りに7人とギムリの元へやってきました。
ちょうど食事後で、デザートがないと騒いでいた小さな人、メリーとピピンは大喜び。
「やった!リンゴだ!!」
「ねぇねぇ!8つある?1人1つあるかな!?」
2人は疑いなくおばあさんに駆け寄ります。
しかし、このおばあさんはサルマンが化けた姿。
リンゴはひとつだけガンダルフ専用惚れ薬入りです。誤って誰かが食べてしまわない様、今はサルマンのポケットの中です。
「ああ、たんとあるよ。好きなのをお選び〜」
ニヤ〜リと不気味な笑みを浮かべたおばあさんに、メリーとピピンは少々ビビりましたが、それよりも食欲です。「わーい」とリンゴのかごを漁りはじめました。

1人1人がリンゴを手にし、ガンダルフが最後に選ぼうとかごに近寄った時でした。
おばあさんが、1つのリンゴをガンダルフの目の前に差し出します。
「これが美味しいよ。ほら…艶々としていて美味しそうだろ?アンタにはこれをお勧めするよ…」
やはりニヤ〜リと笑ったおばあさん。
不審に思ったガンダルフが断ろうとした時。
「えっ!?何々〜!美味しいの!?」
「そのリンゴ、美味しいの!?」
とっくに食べ終わったメリーとピピンがそのリンゴを目指して突進してきました。
「わ!?」
ドーン!!
目測を誤った2人は、おばあさんに直撃。
リンゴは手を離れ、宙へ。

ひゅるるるる…ごちぃ〜ん!!

小気味いい音がした方を見ると、ギムリが目を回して倒れていました。
手には、先ほどのリンゴが、一口だけ齧ってありました。
「まさか、リンゴに毒が!?」
駆け寄った大きな人、ボロミアがそんな事を言い出しました。

「さ、サルマン!?」
リンゴがなくなってしまったサルマンは、もう強行突破です。
「ああ…ガンダルフ!会いたかったよ!!さぁ、再会の喜びを分かち合おうじゃないか!」
「やめろ!サルマン!!」

ジジィ2人が仲良く追いかけっこをしている背後では、大きい人と小さい人達が悲しみにくれていました。
「ギムリ…もっと遊んでほしかったのに…」
「さぁ、悲しんでいても仕方ない…ギムリを埋めてあげようじゃないか」
「そうだね…」


ガンダルフを除いた6人は、美しいギムリを入れるために、美しいケースを用意しました。
埋める前に、と最後のお別れをしている所へ、レゴラスがやってきました。
「おお、そこに見えるは先日の美しい王子!!何故、こんな物に入っているのだい?」
急に現れたレゴラスに6人は大変驚きましたが、その真剣な眼差しに、小さな人の1人、フロドが説明してあげました。
それを聞いた途端、ガクリ!とレゴラスは膝を落とします。
「ああ!なんて事だ!!やっと見つけ出したというのに!」
あれから何度もギムリに会おうと努力していたレゴラスにとっては、大変辛い再会でした。
ガラスケースをそっと開けて、この間と同じ様に、頬へと手を伸ばしました。
「もうあの美しい瞳で、私を見てはくれないのだね…君は…私の名を呼んではくれなかったね。あの可愛い声で、呼んで欲しかった…そして、君の口から名を教えて欲しかったよ」
もう2度と開かれる事のない口へ、レゴラスは近づきました。
「せめて、最期に…」
硬く閉じられたそこへ、自分のを重ねます。
そして…
……。
…………………。
…長いです。
「…っん!んん〜!!」
「!?今!ギムリの声が!」
「うん!した!したよね!!」
とても長いくちづけに、居場所をなくしていた6人は喜びます。
そして、まだ離れようとしないレゴラスをギムリから引き剥がしました。
「プハ〜!何をするんだ!!」
酸欠で、真っ赤になったギムリをレゴラスは潤んだ瞳で見つめます。
「ギ…ギムリ…ああ!私の愛の力だね!?」
「違うわ〜!!!!」
関西人顔負けのつっこみにもめげず、レゴラスはギムリをしっかりと掴まえ、熱い抱擁を交わします。
「ギムリ…ギムリ…ああ、また君の声が聞けるのが嬉しいよ!君が私を見てくれるのが嬉しいよ!!」
ギムリにとっては訳がわかりません。
誰かに今の状況を説明してほしいと思い、レゴラスの腕の中から何とかキョロリと回りを見回しました。
すると、メリーとピピン、そしてボロミアが。
「ギムリ、生き返ってよかったね!」
「これでリンゴが安心して食べれるね!!」
「…お前たちにはそれしかないのか?」
「「ううん!あとボロミアがあるよ〜vv」」
「わ〜!離せ〜!!」
…じゃれあっていました。
反対側を見ると、フロドとサム、そしてアラゴルンが。
「愛は何よりも強いな…」
「…そうですね」
「フロド!お前に何かあったら、私の熱いベーゼで!!」
「…」
「おらの旦那に何するだ〜!!」
…フロドを取り合っていました。
けれど、何となく状況把握をしたギムリ。
思わず叫びます。
「私はリンゴが頭に当って気絶していただけだ〜〜〜〜!!!!!」
その声は、誰に届く事もなく。
そして、その後レゴラスはギムリを強制的に闇の森へ連れ帰り、幸せに暮らし続けるのでした。



長!とにかく長い!!もう最後の方はなげやり(笑)しかもやっぱりギャグおち(笑)今回ツッコミ入れてる余裕なかったから、まあ最後に落としておきました!
童話口調を目指して書いてみました〜疲れた…