優しさ




彼の背中を見つめた。

きっと、帰ってこない旅。
帰って来れない旅。



「何も、兄さんが行かなくても…」
「お前が行く理由もないだろう」





行かないで。
行かないで。

引き止める術は何もない。



「お体には…気をつけて」
「お前も」





気がついた時から追いかけていた背中。
いつか、追いつくのだと。
いつか、頼りにしてもらうのだと。

「ファラミア」



兄の呼び声。
「はい」
「行く人間が大変だと思うな。残る人間が大変だと思うな。
常に、試練は同じだ」
「…はい」



よく、聞いていたその台詞。
よく、聞かされていたその台詞。

兄が大変なのではない。
弟が無力なのではない。

常に、同じなのだと。
試練の形は違えど、乗り越えなければ同じなのだと。





「貴方に恥じない人生を」
「お前に恥じない人生を」

自然と、腕が伸びる。
兄の腕と私の腕をコツン。

自然と漏れる笑み。
それを見た、兄もにっこり。



「では、な!」

颯爽と馬に跨り、余韻も残さず駆けて行った。
貴方はそういう人。





笑みのまま、固まっていた顔から。
水滴がひとつ。
ふたつ…。



…なんじゃこら。何気に書いたんだけど、これ、100題ラストの「貴方という人」に載せてもいい様な内容に…(汗)
でもあれは、他に書きたいのあるからとっとくもんね!(笑)ボロさん書くと暗くなっちゃう私のSS。