愛しき君




逃げてしまった鹿を追いかける訳にも行かず。

今、その場から動く事が大変不自然な気持ちがして。
その場から猛ダッシュで逃げたい気持ちを必死で押さえて。

笑った。



つもりだった。
しかし、レゴラスの顔を見ると、私は笑えていなかったのかもしれない。
もしかしたら泣きそうな顔をしていただろうか。

「…やあ、レゴラス。こんな所で会うなんて奇遇だ」
「そうだね、こんな森の中にギムリがいるなんて思わなかったよ」
「ああ…さっきの鹿が…」

フイ、とそれまでレゴラスを見ていた顔を、鹿の逃げた方向へと移す。
とたん、強い力を感じた。


ビックリして焦点を合わすと、そこにはレゴラスのアップ。
どうやら首を無理矢理回された様だった。



「レゴ…ラス?」

「どこかへ行ってしまわないで…」



小さく聞こえた声に、私の心は小さな悲鳴を上げた。


「どこへ…行くと。どこへ行けると言うんだね…」





さらに小さく呟いた私の言葉は、きっとレゴラスには届いていない。

レゴラスが悲しそうに私の肩に顔を埋める。
私はされるがままにして、その悲しき人を見つめた。


ここで可哀相に、と頭を撫でてやればレゴラスは救われるのだろうか。
ここで私もずっと好きなのだと言葉にしてやればいいのだろうか。



どれも違う。
何をしても、何を言っても。

私たちは救われない。




ならば、私が出来る事は、こうして傍にいる事なのだと。

名を呼び。
笑い。
一緒に。





…。

やっぱり、好きだとは伝えなければならない気がする。



シリアスかと思えば最後にオチましたな(笑)
ひっさびさのレゴギムでした。連載メモなくしちゃったから、想像で続き書きました。…どういうラストなんだ?この話(知るかい)