「ここにもいねぇ…」 ボソリと呟いたつもりだったのに、静かな図書室にはその呟きが響く。 周りの勉強している学生らにジロリと睨まれて、へへ…とその場を後にした。 図書室を出る際には、史書のマダムにまで睨まれた。 『ここは、勉強や本を読みに来る所であって、人を探したり、会いに来る所ではない』 よくセブルスが口にしていた言葉が脳裏に浮かんだ。 「つってもしゃあねぇじゃんか…ここ位でしか、お前捉まえれねぇもん…」 今度は、廊下で呟く。 その呟きは、睨まれる事はなかったが、シリウスの気持ちを落ち込ませた。 …そう。 『その』図書館でさえ、セブルスはいなかったのだ。 「ど〜こ、行っちまったのかな…」 次に向かう場所が思い浮かばず、じっと自分の靴を眺めていた。 (…教室にはいなかった。 実験室にもいなかった。 …まさかと思いつつ、俺らの受けてた教室も見た) いない。いない。 どこに行った? ボ〜と行く当てもなく、ブラブラしていた。 「やあ、シリウス」 後ろからポン、と肩を叩かれた。 誰かと振り向けば、悪友の一人、リーマス。 「よぉ…」 「あれっ?どうしたの、元気ないじゃない?」 「あ〜ちっとな…」 分かりやすい程落ち込んだシリウスを見て、リーマスの口端がにぃ、と歪んだ。 「セブルス、探してんでしょ」 「…!な、な、なっ!!」 ズバリと言い当てられたシリウスの慌てぶりが可笑しくて、リーマスは腹を抱えて笑い転げた。 「『何で分かるんだ?』って言いたいの?見りゃ分かるよ〜!君、分かりやすすぎ!」 まだ笑いの消えない表情で、リーマスが全てを代弁してくれた。 「…そ、そうかよっ」 「あれ〜?何、その言い方。セブルスの居場所、知りたくないの?」 リーマスのその一言が、シリウスの態度を一変させる。 パアッと、嬉しそうな表情を顔いっぱいに載せて。 「知ってんのか!?」 と、聞けば。 リーマスは、にっこりと笑って。 「ううん、知らない」 「だあ〜!!」 シリウスは再び底へと落ちる。 リーマスはそんな姿を面白そうに眺めていたけど、さすがに苛め過ぎたかな〜と、ちょっとセブルスが行きそうな場所を考えてみる。 「シリウスが考えそうな所を省く…と〜医務室、とか」 「医務室!?」 「今日、スリザリンとの合同授業がなかったからハッキリ言えないけどね。セブルスってすぐ体調崩して…」 「セブルス〜!!待ってろ、今行くぜ!!」 リーマスの言葉を最後まで聞かずに、シリウスは医務室へと猛ダッシュした。 シリウスの立てた土埃をパタパタと優雅に掃いながら、リーマスにっこり。 「かもしれないねって言いたかったんだけど…人の話を最後まで聞かないの、悪い癖だよ。シリウス」 そして、一人、寮への道を歩き出した。 今晩は、どんなお仕置きをしてやろうかと考えながら。 「セ…スネイプ来てますか!?」 バタ〜ン!!という騒々しい音と共に、喧しい声が医務室に響き渡る。 「シリウス・ブラック!貴方はここをどこだと思っているのです!?もう少し静かになさい!」 怒りのあまりに震えながら、医務室のマダムが小声で叫ぶ。 そんな事はおかまいなし、とシリウスはずかずかと部屋へと入り込む。 「来てませんか?」 「ええ、今日は来ていません。とても良い事ですわ」 だから、さっさと出ておいきなさい。という態度を露わにしたマダムに、これ以上真偽を問い詰めたりしたら、えらい事になる…。 本能でそれを知っているシリウスは、来た時とは全く逆の小声で、「失礼しま〜す…」とコッソリと出ていった。 「シリウス・ブラック。落ち着きが足りません。50点減点」 パタリと閉められた扉のこちら側で、マダムがボソリと呟いたのをシリウスは知らなかった。 「んっとに…どこ行っちまったんだろ…」 トボトボと歩くシリウスの足元に、陽だまりが出来ていた。 「ああ〜今日はすっげぇいい天気だよな…こんな日は、セブルスと一緒に芝生で昼寝でもしてぇよな…」 一人、ボンヤリとそんな事を呟いていた。 そして、頭の中に、ある光景が浮かんだ。 「…そういや、セブルスが気に入ってる中庭があった!」 思い出した途端に、再び猛ダッシュ。 きっと、いや、絶対。 あそこにいるに違いないのだから。 ぜぇぜぇ… やっと辿り着いたとある中庭。 そこは僻地にあるせいか、人があまり来ない。 その割には、しっかり手入れが行き届いていて、居心地は最高。 そこは、セブルス唯一のアウトドアだった。 「…セ、セブルス…?」 そぉっと名前を呼んでみる。 絶対、ここにいるに違いないのだから。 「セブルス?」 キョロキョロと見渡しながら。 きっと、ここにいるんだから。 「お〜い…セブルス・スネイプや〜い」 いつもの楠木の下まで辿り着いた…。 ここに…い、いる…筈。多分。 当てにしていた、その木の下にいないのを確認すると、シリウスは気持ちがずぅ…んと落ち込むのを感じた。 「どこ…行っちゃったんだよ…」 探しても、探しても見つからない。 会いたいのに。 声を聞きたいのに。 あの仏頂面が見たい。 細い体。 自分とは違う細い黒髪。 透ける様な肌。 何もかもが、今自分に不足してる。 「ちっきしょ…!セブ〜!!」 じっとなんてしてられなくて、その楠木を思いっきりどついてみた。 どぉん、という音がして。 「うわぁ!」って声がした。 「え!?えっ!?セブ!?セブルス!!」 どこからしたのかと辺りを見回すシリウスの頭上から、いつもの不機嫌そうな声が降ってきた。 「…木を叩くな。馬鹿者」 見上げると、そこには太い枝にしがみ付いて、下を睨みつけているセブルスの姿。 木登りをしたせいか、髪が乱れている。 「セ、セブルスゥ〜!!」 やっと見つけた。 やっと会えた。 シリウスの顔がふにゃりと崩れ、情けない声が出てきた。 「何だ、煩い男だ。さっきから何度も人の名前を気安く呼ぶな」 「え?何だよ、気付いてたなら返事してくれてもいいじゃないか」 漸く会えたセブルスは、いつも通り冷たくて。 ついつい、ブスッと不貞腐れる。 くるりと木に背を向けた所で、愛しい人の声。 「私の居場所位、私の返事がなくても見つけ出せ」 もう一度見上げると、もうセブルスはこっちを見ていなかった。 木にもたれかかって、空を見ている。 「…何で、そんな所にいるの?」 「人に聞く前に、動いたらどうだ?人に聞くだけでは、分からぬ事もある」 こっちへ来い、と言外に言われ、ああ!と三度目の猛ダッシュ。 あっという間にセブルスのいる枝まで辿り着いた。 「待て」 その枝に乗ろうとすると、止められた。 「何で?」 「貴様の様な重い奴が乗ったら折れる。反対側の枝にしろ」 冷たい言葉にガックリしたが、それも一理ある、と反対側の枝に乗る。 「…分かったか?」 「ああ!最高!!」 木の下で浴びる木漏れ日もいいけれど、こうして枝に囲まれて浴びる木漏れ日はもっと良かった。 「木に…抱かれてるみたいで気持ちがいい…」 セブルスがポツリと漏らした。 「おい、セブルス!!降りるぞ!!」 「何故」 「いいから!早く降りる!!」 「…イヤだ。私はもう暫くここにいる。飽きたのなら一人で降りろ、シリウス・ブラック」 あいも変わらず冷たい恋人。 いくら慣れたものとはいえ、シリウスも逆上してくる。 「だぁ!降りるぞ!!お前が何と言おうと、降りるんだ〜!!」 「うわっ…!?おい、危ない!」 「じっとしてろ!」 ひょい、とセブルスを肩へと持ち上げると、その体勢でスルスルと木を降りる。 最初は恐怖で固まっていたセブルスも、器用に降りていくシリウスに感心した、というか呆れたというか…すっかり体の力は抜けていた。 とん、と久しぶりに芝生へ足を下ろす。 「はい、到着〜」 「全く…強引な奴だ」 ふぅ、と呆れたため息をついて、シリウスの傍から離れようとした途端、強い力で引っ張られ、あれよあれよと腕の中。 ぎゅう、と抱きしめられた。 「何だ…?」 「木なんかよりいいだろ?」 2人きりのせいか、セブルスは暴れない。 大人しく腕の中。 シリウスの広い胸に頬を寄せている。 「…馬鹿な奴だ。木にヤキモチか?」 「う、うっせ!木だろうが草だろうがセブには指一本触れさせネェの!」 「ふ…では、芝生に寝転がるのも駄目か」 「当然!俺の上に寝転がるの!」 「寝心地が悪そうだ…却下」 クスクスと笑いながらセブルスが腕を回す。 「お前が、いい」 数分後、太陽の暖かさと、恋人のぬくもりで、ふわふわの芝生の上でお昼寝するシリウスとセブルスの姿がありました。 |
花生さんサイト開設1周年おめでとうございます!!…遅刻組です(^^;うひょ〜ん、初シリセブですが捧げさせて頂きます!!これからも頑張って下さいvv
Jさんは出すな!というご要望があったので、リーさんを出してみました(笑)あ、お仕置きとはHじゃないっす。こしょぐりの刑、とかそんなんです。今晩、シリウスは眠れません(笑)もちろんJさん参戦!