「気をつけて行ってらっしゃい」 心配そうな母親の声に送り出されて、緑ずきんちゃんこと、セブルス・スネイプはおつかいに出掛けました。 おつかい内容は、病気のおばあさんのお見舞い。 セブルスはおばあさんを尊敬していましたので、お母さんのこの提案に、大賛成で頷いたのでした。 …でも。 幼いセブルスは、一人で出かけるのは初めてでした。 それも、森の向こうまで。 しかも、お母さんの言っていた話も気になります。 「森には、わるぅい狼さんがいるからね。気をつけて行くんだよ」 何をどう気をつけてよいのか…セブルスは幼心に思いました。 それでも、やっぱり楽しさもあるもので。 もしかしたら、珍しい薬草が見つかるかもしれない、という期待もありました。 そうこうしている内に、森の入り口までやってきました。 随分と鬱葱としていて、セブルスの恐怖心を煽ります。 けれど、ここを通らなければ、おばあさんの家にはいけないのです。 「…大丈夫だ。まだ、昼なんだし」 そう自分に言い聞かせると、手に持ったバスケットをギュウと握り締めて、森へと入っていきました。 いくら昼とはいえ、森の木々が太陽の光を遮断していて、中は結構な暗さです。 ビクビクおどおどと歩くセブルスの姿を、木々の間から見つめる姿がありました。 「…へぇ、可愛い子が来たね」 それは、この森に住む狼でした。 お母さんが言っていた『わるぅい狼』です。 口元に、ニヤリと笑みを浮かべると、狼は動き出しました。 セブルスの元へと。 ガサッという音に、ビクリと過剰反応して振り向いたセブルスが見たのは、ボロい格好をした男でした。 顔に人懐こそうな笑みを浮かべて立っています。 「やあ、こんにちわ」 礼儀正しく挨拶までしてくるその男に、セブルスは少し警戒心をといて挨拶を返します。 「…お前、誰だ」 それでも睨みつけながら男の正体を暴こうとします。 そんなセブルスにも、ニコニコと笑って怒った様子など微塵も見せない男。 「僕は、リーマス・J・ルーピン。狼です…て、言っても人なんて襲ったりしないから安心して?」 面と向かって、自分は狼だ、なんて言われるとは思ってみなかったセブルス。 驚いて目を見開けました。 そして、思います。 狼ってそんなに悪い動物じゃないのかも…と。 もちろん、これは狼リーマスの陰謀です。 彼はとても策士だったので、わざとこうして正体を明かしたのです。 「…君は?どこ行くの?」 「わ、私はセブルス・スネイプ…おばあさんのお見舞いに行く所だ…」 「ふぅん…ところでさ、そのおばあさんって美人?」 「は?いきなり何を…」 「ん。ちょっとした好奇心だよ。それでどう?」 「…おばあさんは美人だ。しかも知性豊富で、私の憧れの人だ」 「へえ…すごいね!」 セブルスは見知らぬ人に、尊敬しているおばあさんを褒めてもらえて、ちょっと嬉しくなりました。 リーマスは、ますます笑みを深めます。 「ところでさ、すぐそこに珍しい薬草が生えているんだ。君、それでおばあさんに薬を作ってあげたらどうだい?きっとおばあさんも喜ぶよ」 「ほ、本当か!?」 「もちろん。さあ、案内するから一緒に行こうよ」 ついて行こうとしたセブルスの脳裏に、お母さんの言葉が蘇ります。 決して寄り道はしない事! 「そうだった…寄り道してはいけないのだ」 「寄り道?違うよ、これはお見舞いの為じゃないか。少し薬草を摘む位ならバレやしないよ。それに、薬を持っていけばおばあさんも喜ぶんじゃないかな?」 リーマスの言葉に、セブルスはすっかり騙されてしまい、薬草を摘みに行く事にしました。 「わあ…!」 リーマスが連れてってくれた薬草畑には、今までセブルスが図鑑でしか見た事がない様な珍しい薬草が所狭しと生えていました。 「すごい…すごい!!ああ、ルーピン、ありがとう!!」 満面の笑みでお礼を言われ、リーマスは顔を少し赤らめました。 セブルスは興奮気味に薬草を摘み始めます。 だから気付かなかったのです。 リーマスがいつの間にかいなくなっていた事を。 さて。 一方おばあさんことルシウス・マルフォイは、セブルスのお母さんからふくろう便にてセブルスが来る事を知り、今か今かと待っていました。 そこへ。 トントン。 「ああ、セブルスかい!?」 ルシウスは布団をはね除けて飛び上がり、ドアを勢いよく開けました。 そこに立っていたのは、待ち焦がれていたセブルスではなく、見知らぬ男…リーマスでした。 「…何だ、貴様は」 「何だ…君がおばあさん?は〜ガッカリだよ…」 「貴様、目上の人間には敬語を使わんか!!」 リーマスは、扉が開いた途端にルシウスに襲い掛かります。 セブルスを置き去りにして、先回りしたリーマスはルシウスを食べてセブルスを待ち伏せし、そして2人とも今日の晩ご飯にする腹積もりだったのです! 「ちょっとちょっと…こんなの僕、食べたくないよ〜」 「私だってゴメンだ!!」 「ルシウスは殺しちゃうっていうシナリオにしない?」 「私が狼を退治して、セブルスと幸せに暮らすというのもいいぞ?」 ルシウスは中々しぶとく、リーマスは少し苦戦しました。 バチバチと火花を散らす2人を放置しておくと、セブルスがやってきてしまいそうなので、ルシウスさんには相手を変えましょう。 「こら、ナレーション!!何を…」 「ルシウス先輩っ!!」 バタ〜ンと扉を開けて入ってきたのは、真っ赤な髪の男…アーサーでした。 「な!?何だ、お前!?」 「先輩をリーマスに奪われる訳にいかないですからっ」 「…僕は奪うつもりもないですが…でも助かった!!アーサー先輩、よろしくお願いしますっ」 「任せとけ!!」 そういうやいなや、ひょい、とルシウスを担ぎ上げると来た時の勢いでまた立ち去って行きました。抱きかかえられたルシウスの悲鳴が尾を引いています。 「セブルス〜!!!!!不甲斐ない私を許せ!!」 さて、邪魔者の片付いたルシウス宅。 そろそろ来るであろうセブルスを思い、リーマスは布団に入ります。 何もかもが思惑通りでリーマスは嬉しくなってしまいます。 そしてこれからセブルスを食べられるのかと思うと、ますます嬉しくなりました。 こんこん。 ノックの音がして、セブルスの声がします。 「先輩!セブルスです」 少し緊張したセブルスの声に、何か腹立たしさを覚えつつリーマスは作り声で入っておいで、と答えます。 キィ、と開いた扉の向こうに立っていたのは珍しい薬草を抱えたセブルス。 「先輩に薬を作ろうと思って薬草を摘んでいたら遅くなってしまいました…すみません」 馬鹿正直に遅れた理由を申告しているセブルスが可愛くてリーマスは布団の中で笑いを押し殺します。 「そうか…ありがとう、セブルス」 「…?先輩…ちょっと声が変?」 「ああ、風邪をひいたかな?」 「た、大変!!すぐに薬を…!!」 慌てて薬草を広げるセブルスに、リーマスは布団をちょい、と持ち上げます。 もちろん、顔は隠したまま。 「いや、セブルス…それより暖めてくれないか?一緒に布団に入っておくれ」 「えっ…」 セブルスは顔を真っ赤にしてその場でモジモジとしています。 もう一押しだと感じたリーマスは、さあ…と片手を伸ばしました。 「あ…あの…暖かい、ですか?私、体温低いので…」 すっぽりと布団の中、リーマスに抱きかかえられたセブルスが聞きます。 リーマスは、その低い体温に愛しさを感じつつ大丈夫だよ、と答えました。 「先輩の瞳の色…そんなんでしたっけ」 「暗いから違ってみえるんだよ」 「先輩って、こんなに小柄でしたっけ」 「寝込んでて痩せたかな」 「せ、先輩っ!?な、何か硬い物が…!!」 「お前を食べるためにねっ」 布団をばさり!と退けたセブルスが見たのは、先ほど森であった狼でした。 「ルーピン!?何故ここに…先輩は!?」 「心配しなくてもルシウスは食べてない。その内帰ってくるよ」 セブルスは、逃げたくて仕方がなかったのですが、リーマスがしっかりと抱きついているせいで身動きが取れません。 もぞもぞと何とかその腕を外そうともがくと、硬い物が大きくなった気がしました。 「ル、ルーピン!?」 「やだなぁ、刺激されたから…さて、セブルス…覚悟はいいよね…?」 スルリとリーマスの手がセブルスのスカートの中へと潜り込んできます。 「いい訳あるかぁ〜!!!」 セブルスの叫びは、空しく森にこだまするだけでした…。 |
おしまい。
■
| 「待て待て!!」 「あれ、ジェームズ。どしたの」 「どうしたもこうしたもないよ〜!!続きは!?狼やっつける猟師の話は!!」 「ないよ」(あっさり) 「何で!?何で!恩を売りつけてセブルスにあんな事こんな事するつもりだったのにぃ〜!!」(しっかり猟師の格好) 「あの話はね、グリムが勝手に付け足したお話なの。今回僕達がやったのはペローってもっと昔の人が書いた赤ずきんちゃん」 「ダメダメ!そんなの!!グリム万歳!グリムの赤ずきんちゃんやろうよ!!」 「だってもう終わったもん。あ、ジェームズ?」 「何…」(メソメソ) 「セブルス…美味しかったよ…」(ニヤリ) 「ガ〜ン!!」 |
kirariさんへ捧ぐ色々おめでとうございますSS。リマスネ赤ずきんちゃんでした。指輪で童話シリーズ(?)やってたので、じゃあそんなカンジでいっか〜と書いてみました。
多分、kirariさんのイメージとは違うSSになってしまったと…(汗)良かったらもらって下さいvv