はぁ…はぁ…はぁ… 満月が終わって。 暴れまくった後の惨劇。 そんな中、リーマスは1人体を丸めていた。 呼吸が少し落ち着いた所で、あたりを恐る恐る見回してみる。 どうやら、今月は何もなかった様で、ホッとして屋敷を後にした。 叫びの屋敷からホグワーツに帰るのは、何度経験しても嫌なものだった。 誰かに会ったらどうしよう。 何か感づかれたらどうしよう。 不安でいっぱいで。いっぱいで。 この時期は足元に転がる枯れ葉にその気持ちを増長させられている。 ざ…。 ホグワーツまであと少し、という所で人影を見つけてギクリとする。 その人物は、しっかりとこちらを向いて真っ直ぐに立っていた。 「…セブルス」 「酷い格好だな、ルーピン」 まるで、廊下のどこかで会った様な言葉を交わして、セブルスはざくざくと枯れ葉を踏みながらリーマスの所までやってきた。 迷いも見せずに。 「何故…?」 「何がだ」 「待って、たの…?」 「その通り。その情けない顔が見たくてな」 思いがけずサラリと言葉を返してくるセブルスに、リーマスも思わずいつも通りに接してしまう。 今までビクついてた事など忘れたかの様に。 「そう…。じゃあ…よく見てよ」 「もう見た。想像通りの酷さに私は満足だ」 「相変わらず酷いなぁ…」 苦笑するリーマスに、フン、と顔を逸らすセブルス。 そのいつも通りの対応に、いつもと違う事を恐れている自分がまるで変な気持ちになってくる。 「僕の事、怖くはないの?」 頭ひとつ違うセブルスの身長。 髪を触るのには丁度いいので、リーマスはこうしてセブルスがそっぽを向いた時に髪の毛を自分の指に巻きつけながら話をしていた。 もちろん、当のセブルスはとても嫌がっていたのだけれど。 今日のセブルスは、特に嫌がる事もしないで。 「今のお前を怖がる理由などないだろう」 「そっ…か」 セブルスにそっと髪を絡めている指を解かれる。 その時に、制服の袖口から見えた先月の傷跡。 外から見ては分からないけれど、まだ巻かれたままの包帯だってあるだろう。 それでも、セブルスは『怖がる理由』がないという。 解く為に伸ばされたその手をしっかりと掴んで、リーマスは自分の方へと引っ張った。 バランスを崩したセブルスはいとも簡単にリーマスの胸に飛び込んでくる。 「…!何をする!!」 「大好きだよ、セブルス」 怒りに赤くなったセブルスの顔がますます赤くなる。 「なっ…!なっ何を…」 「ねぇ、セブルス?」 しっかりとセブルスを抱き込んで、その頭に顔を埋めて嬉しそうに笑っているリーマスが、セブルスの苦情を物ともせずに自分の言葉を綴る。 すっかりセブルスは自分のペースを崩されてしまっているから、話をこちらに持ってくるのはとても簡単だ。 「な、何だ…?」 「来月からもさ、ここに来てよ」 「何…?」 「僕、こうしてセブルスと一緒に帰りたい」 「………」 「…駄目?」 抱きしめた腕に力が入る。 そしてまた、セブルスの腕にも力が入った。 「……、仕方がない。わ、ワガママな狼に付き合ってやろう」 小さな小さな声で。 いつも通りの突っ張った台詞。 そのギャップが可笑しくて。 その台詞が嬉しくて。 リーマスはセブルスをただただ抱きしめる。 愛を込めて。 敬意を込めて。 感謝を込めて。 そして、祈りを込めて。 コンコン。 せっかちなノック音。 間違いなくセブルスだと思ったリーマスはそのままほかっておいた。 セブルスなら勝手に入ってくるから。 「リーマス・ルーピン教授の調子はどうかね?」 部屋の片隅にうずくまっていたのに、あっさり発見されて、上から見下ろされている。 光の加減で、セブルスの顔が笑っているのか、怒っているのか分からない。 「やあ…。すこぶる調子はいいよ…」 「ほう?どこをどう見たら調子がいいのか教えてもらいたいものだ」 弱っている体では強がる元気もなく、ただ力なく笑うしかなかった。 「ほら」 そこに、そんな声と一緒にセブルスの片手が差し出された。 薬草に蝕まれて荒れ放題の手。 その手を不思議そうに見、そしてセブルスの顔を見上げた。 「…何?」 「つかまりたまえ!いつまでもそんな所にいては体を冷やす!」 理解をしなかったリーマスに腹をたてたのか、イラついた声でセブルスは手をさらに差し出した。 「ああ…ありがとう…」 その手を握った時に、十数年前の記憶が蘇った。 『お前を怖がる理由などない』 今も、怖がってなどいないセブルス。 嬉しくて嬉しくて。 やっぱり手を引いていた。 「ルーピン!」 「あはは、ごめんごめん!でもさ、同じ手に引っかかるセブルスもセブルスだよ〜」 引かれた手によって、バランスを失い、狭い部屋の隅に大の大人が2人も押し込められた状態になっている。 狭い事この上ない。 ギュウと抱きしめると、暖かさが還ってくる気がした。 いつもは暴れるセブルスも今日は大人しい。 「大好き…」 「…ああ」 「知ってた?」 「耳にたこが出来る程聞いているからな」 「うん…大好きだから」 「…そうか」 その場にそのまま。 体が冷える事なんてお構いなし。 「やっぱり、セブルスの元で人間に戻るのが一番いい」 「ふん」 相変わらず一回り小さいセブルスをしっかりと抱きしめる。 「何年振りかな…」 「忘れたわけではなかろう」 「そうだけど…分からなくなる位、恋しかったんだよ」 「…ふん」 ただただセブルスを抱きしめる。 幸せをかみしめて。 思い出をかみしめて。 「大好き…」 セブルスの荒れた手が、小さくリーマスを抱き返した。 |
うわははははは(笑うしかない)どこかで犬と鹿が悔しがってそうです…