渡さねぇ!




パタパタパタ…
いつもと同じ足音がする。
えらく軽い、もうお馴染みとなったこの足音は、志村。
きっと今日も性懲りもなく、俺を誘いに…。

「なっかもとく〜ん!」
勢いよく入ってきた志村の口から出たのは、俺ではなく同室の中本の名前。
いつもなら鬱陶しい位「新井くん!新井くん!」を連呼するのに…。
珍しい。
何気に志村の行動を見ていると、どうもテスト勉強で分からない事があったらしい。
いつも明るいだけがとりえの笑顔を少し曇らせていた。
…そういやあ、もうすぐテストか。

「いいですよ」
ボ〜としていたら中本の承諾の声。
カタンと机から立ち上がると、やけに嬉しそうな志村と出ていこうとする。
「…どこ行くんだ?」
気になって聞いてみると、意外そうに振り向いた中本ではなく、志村が俺の質問に答えてきた。
「テスト勉強しに行くんだよ〜!聞いても聞いてもわっかんないからさ〜」
テヘヘ、と全く悪びれてなどいない笑顔の志村。
なぜか、心の中で警報が鳴り響く。
「…別に、志村ン所行かなくても、ここでやりゃあいいだろ?勉強道具、持ってこいよ」
「え〜、でも…」
「そうですね、ここでなら新井くんも勉強出来ますしね」
「「えっ!?」」
中本の思いがけない発言に、俺たちの声がハモる。
その声に、ビックリした中本の目が大きく見開かれる。

ああ…この顔、好きなんだよなぁ〜


何だかんだで、結局俺たちの部屋で勉強する事になった。
「じゃ、ボク他の教科書持ってくるねっ!」
そう残して志村がまたバタバタと出て行く。
煩いのがいなくなって、いつもより静かに感じる部屋。
カタ…コト…
中本が動く音だけが響く。
「新井くんには、余計なお世話でしたか?」
静かな部屋に、静かに響く中本の声。
こいつには、そういう雰囲気がよく似合ってる。
「イヤ…たまにはテスト勉強するのもいいんじゃね?」
俺の声でその空気を壊すのがイヤだったけれど、黙ったままでいる訳にもいかず答える。
その答えが中本の珍しい笑顔を引き出した。
猫に向けている様な笑顔じゃなかったけど。
綺麗で儚い微笑み。
現に、バタバタと聞こえてきた足音を聞いて、戻ってきましたね、といつもの顔に戻ってしまった。
志村め…。


「だから、この方式を…」
「う〜??」
分からない場所があったら聞いて下さい、と渡された問題集。
比較的スラスラと解く俺に反して、志村はずっと中本を独占しっぱなしだ。
「で、ここでxの値が…」
「あっ!本当だ〜!!ボクにも解けたっ!!ありがと〜中本くんっvv」
嬉しそうに叫んだ志村が、ガバリと中本に抱きつく。
「!!!!!」
思わず叫びたくなったが、中本がどういたしまして…と驚いた顔をしつつも普通に対応してるので、それ以上に叫ぶのも馬鹿馬鹿しい気がして我慢した。
でも…いつまでくっついてるんだっ志村ぁ〜!!
気持ち良さげにいつまでも離れない志村に、困った声で問題の続きを…と暗に離れて欲しいと訴えているのに、当の志村は…。
「中本くんっていい匂いがするねvv」
と全く聞いていない様子。
ってかお前〜!!

「おらっ!中本が迷惑してるだろうが!さっさと問題集解けよ!!」
ブチ切れた俺が、志村の首根っこを掴んで中本から引き剥がす。
中本から離されてブーたれてた志村がチラリとこちらに視線をよこす。
『羨ましいんでしょ』と言わんばかりのその目にムカついて、ペシンと頭を叩いておいた。

全く、油断も隙もない…。



その後は滞りなく勉強会は進み、遅くなったのでお開きとなった。
「今日はありがと!また教えてね、中本くんっv」
そう言うと、ぴょこんと飛び上がって中本の頬に口を。
…ってぬぁに〜〜!!??
呆然としている俺と、真っ赤になってる中本をバックに、おやすみ〜vと帰っていく志村。
あ…あいつはぁ〜!!
チラ、と中本を見るとまだ赤い顔をして困った顔をしていた。
こいつ、笑顔以外の表情はよく出るんだよな。
「…別に、ほっぺにちゅーなんて気にする事ねぇんじゃねぇの?」
「そ、っそうですよね。お礼の気持ちなんですよね…」
それでも赤い。

ムカつく。
何かすっげぇムカつく。
今、こいつの頭ン中は志村のキスでいっぱいなんだろうな。
さらに言えば、志村の事しか考えてない状態ってやつ?
ムカつく。
「中本」
呼べばすぐに振り向いてくれる。
警戒心のない顔に手を伸ばして眼鏡を取る。
キョトンとした顔で俺をジッと見ている…けど、これがないと見えないらしいからぼやけた俺を見てるんだろうな。
眼鏡のせいで分かりにくいけど、中本の目はすっごく綺麗。
大きい瞳の下がうっすらと赤くてやけに色っぽい。
他の奴らは知らないだろうけど、中本は髪だってすごく綺麗。
いつも縛ってて分かりにくいけど、ほどいてる時の髪は…キューティクルってやつ?
華奢な体も。
些細な癖も。
同室の俺だけが知ってる中本。
「あの…眼鏡…」
「ああ…」
ほら、と出した手から眼鏡を受け取ろうと手を伸ばしてくる。その手をしっかりと掴んで自分の方へと引き寄せて…。

ドン!
「な、何するんですかっ!?」
口元を押さえてさっき以上に真っ赤になった中本に、ニヤリと笑いかける。
「お礼だよ」


これで、中本の頭ん中は、俺だけのもの。
…暫くはね。



卒業Mです〜(汗)誰か覚えてらっしゃるかしら…(イヤCFに比べりゃ新しいだろ)しかも新井×中本ってどぉ!?どうなの!?しかも志村絡み!
私、卒業Mは全く同人とかしてなかったから知らないんですよね…どうなんだろう…またマイナーなのかしら(汗)誰か教えて下さい〜(^^;