「あ」
後ろから聞こえてきた普段聞かれない様な間抜けな声に
思わず振り向くとハルヒがガサゴソとカバンを漁っている。
「どうしたんだ?」
「ん〜…鍵、忘れてきちゃったみたい」
聞けば、部室の鍵を家に置いてきたとか。
律儀に持って帰っているのかと聞けば、何かあったら責任問題でしょう!と
偉そうに言われた。
変な所だけしっかりしているなあと自然とため息がでた。
「そんな訳でキョン」
「あ?」
「皆に…ああ、全員じゃ大変よね。じゃあ古泉君に今日は部活なしって伝えてきて!」
「は?」
「私はみくるちゃんと有希の所に言ってくるから!」
頼んだわよ!と俺の返事も聞かずに教室を飛び出していく。
2人に言いにいくのならついでに古泉の所にも行ってくれればいいものを。
よっこらせ、と掛け声付きで席を立つと、
9組へと続く廊下を歩きだした。
9組の教室のドアは開けっ放しだった為、中を覗く為に顔を出した。
必死に探さなくても古泉はすぐに見つかった。
ちょうど、女の子達が古泉の机の周りに固まっていたからだ。
何やら盛り上がっているらしいその輪に入っていくのも水を差すのも躊躇われて、
どうしようかと迷っているとちょうど9組のやつが廊下へ行こうとこちら-ドアの方へと歩いてくるのが見えた。
「あ〜あのさ」
「はい?」
顔をこちらへ向けたそいつの顔に誰?と書かれてはいたけれど迷惑そうな顔もされなかったので
安心して用事を頼んでみた。
「古泉、呼んでほしいんだけど…」
「あ〜古泉ね」
ちょっと待ってとソイツが振り返って、それにつられる様に俺がもう一度9組の中を覗き見る。
すると、呼ぶ前から古泉がこちらへと向かってきているのが見えた。
「古泉、ちょうど良かった。お客さんだよ」
じゃ、俺はこれで、とソイツは廊下へと出ていく。
すれ違い様にありがとな、と伝えるとニコと笑顔で返してくれた。
「…何の、ご用でしたか」
古泉の声にハッとする。
そうだ、用があってきたのだった。
「ハルヒがな、部室の鍵を家に忘れてきたんだと。だから今日の部活はなしだ」
「そうですか…わざわざありがとうございます」
何だか様子のおかしい古泉にどうした?と尋ねてみても何がでしょう、とあっさり返されてしまった。
「部活がないのがそんなに寂しいのか」
「…そりゃ、寂しいでしょう。毎日繰り返されている事がないというのは」
「ま、そうだよな」
ポリ、と鼻の頭をかく。
古泉は動かない。
「あ〜…戻らなくていいのか?何か邪魔しちゃってゴメンな」
教室の中を指差しながら、苦笑いで謝ると古泉の表情が辛そうに歪んだ。
「古泉?」
「いえ…お気遣いどうも。あなたもそろそろ教室へ戻った方がいいですよ」
言われて、時計を見れば確かに結構な時間。
「ああ、じゃあな。また明日」
「…ええ」
何だかおかしいのが気にはなったのだが、廊下を少し進んだ所でチャイムが聞こえてきたので慌てて戻る事にした。
…最初はですね、キョンの片思いにしようと思ったです。気付いたらいつもの古泉の片思いでした。キョンがニブいからこうなっちゃうんだ…
古泉目線の9組の出来事を書いてみました。気になる方はどうぞ〜(短めです)→古泉版