○月×日 朝 「おはよ〜シリウス…って何、どしたのその顔!」 いつもの様にベットを覗き込んだジェームズが驚いてシリウスを指す。 そこにいたシリウスは『憔悴』という言葉がとてもよく似合う風貌になっていた。 「ぁあ〜?もう…朝、か…」 声も姿同様、疲れきっている。 「…寝てないの?」 「ん〜、スネイプ対策考えてて寝そびれた…いきり立って興奮してたし」 あまりにシリウスらしい姿に、思わずジェームズは噴き出す。 「なんだよ…」 「いやあ、いじらしいね!今日はとりあえず休みなよ。寝た方がいいよ」 「休むぅ?!」 ジェームズの言葉に、スックと立ち上がるシリウス。 ビックリしたジェームズの目の前に、指。 「いいか!休むという事はな〜!休むという事は…!」 「スネイプに会えない?」 言葉を引き継いだジェームズに、シリウスは顔を真っ赤にさせて硬直した。 指はジェームズの目の前のままだ。 それを邪魔くさそうによけると、ジェームズはまた笑う。 「寝ろ」 次の瞬間、ジェームズのケリが見事に命中し、シリウスはベットに沈む事になった。 ○月×日 朝食 「あれ?シリウスは?」 大広間で先に朝食を食べていたリーマスが1人でやってきたジェームズに尋ねた。 「ああ、体調が悪いらしくてね、寝てるよ」 「ふうん…珍しいね」 「そうだね」 これからきっとよくある事になると思うけど、と心の中でそっと呟くとジェームズはスリザリン席を見た。 セブルスはいつもの席で1人黙々と朝食を摂っている。 「ちょっとゴメン」 ジェームズは足取り軽くスリザリン席へと向かった。 「や、おはようスネイプ!随分と少食だね〜もっと食べないともたないよ」 いきなりやってきたジェームズに、一瞬驚いた様に目を丸くしたが、すぐに険悪な瞳に戻る。 「…何の用だ、ジェームズ・ポッター。朝から不快な気分を振りまきにきたか」 「やだなあ、そんなツンケンしないでよ。今日はちゃんと用事があって来たんだから」 「用事。珍しい。何だ」 話に乗ってきたセブルスに、ジェームズはニッと笑う。 そして、内緒話をするかの様に、体勢を低くして口元に手を。 それを見たセブルスもまた、つられるかの様にジェームズに近づく。 「実は…シリウスが」 「…そういえば今日は見ないな」 「うん、体調を崩してね…部屋で寝てる」 「明日はヤリでも降るかもしれんな」 「かもね。でね…」 そこで、ジェームズがニヤリと笑った。 セブルスの学習能力が、危険信号を放つ。 サッと離れたセブルスを見て、今度は優しく笑う。 「まだ話済んでないよ」 「…内緒にする様な話ではなさそうだ。続きを話せ」 「うん…じゃあ。でね、スネイプに伝言」 「伝言?」 「うん、『お前の陰気なツラを見て、厭味のひとつでも聞かないと一日が始まった気も終わった気もしない。だから今日は休みたくない』って!」 聞きようによってはすごい告白な気もするが、言い方と相手によって、逆の意味にも取れる。 案の定、セブルスは逆の意味に取った。 それこそ、ジェームズの思う壺。 「上等だ…!ポッター!」 「何?」 「合言葉を教えろ」 ニィッコリ笑ったジェームズ。 怒りのあまりセブルスは危険信号を見逃した。 ○月×日 昼休み 朝、ケリを食らって気絶。 そのまま爆睡モードに入ってたシリウスが漸く目を覚ました。 「あ〜…畜生、ジェームズの野郎…」 それでも、寝たお陰で随分と頭がスッキリとした。 (さて…じゃあスネイプに会いに…じゃなくて!授業を受けに行くかな、うん) ゴソリと動きだした所で、バタ〜ンとすごい勢いでドアが開いた。 ジェームズが様子を見に来たのかと思って顔を上げたシリウスが見たのは、緑のネクタイ。 セブルス・スネイプの姿。 「ススス、スネイプ?!」 何でここに!!叫びにならない思いが、シリウスを硬直させた。 「ブラック…体調が悪いそうだな…」 「え?!あ?!い、や…もう平気だ!午後から行こうかと思ってた所だ!!」 セブルスがお見舞いに来てくれたのかと思ったシリウスは、飛び上がってシッポを振らんばかりの勢い。 目がキラキラと輝く。 輝いた瞳は、セブルスの姿を捉える事は出来ても、機嫌を読み取る事は出来なかった。 「そうか…もう回復したのか。体力馬鹿は楽でいいな。それとも、病気が馬鹿を恐れて逃げ出したか」 いつもよりも嫌ね声で厭味を言う。 シリウスも止めておけばいいのに、その挑発に乗ってしまう。 そして始まる低次元な言い争い。 「お前こそ…!その匂いでは病気が嫌がって近づかないだろう!便利でいいよなあ!」 「それは違う。近づかない、のではなく、近づけない、様にしているのだ。やはり馬鹿は考えも浅はかだな」 「んだとぉ〜!!」 全くもって低次元。 いつか「お前のかーちゃんデベソ」など言い出しそうな言い争い。 フ、とシリウスの目にセブルスの緑が入った。 赤と黄色で埋め尽くされた空間に浮かぶ、緑。 それがシリウスを冷静にさせた。 「…お前、どうやって入ってきたんだ?」 今更な質問に、セブルスも少々頭が冷えた。 「…お前がポッターに言付けたんだろう。合言葉付きで受け取らせてもらったまでだ」 ここで初めてシリウスはこれがジェームズの策略だと知る。 (そうだよな〜心配してくれた訳じゃないよな) 「ブラック」 心ならずも落ち込んでいると、セブルスの声。 慌てて気持ちを浮上させる。 「なんだ?!」 「…やはりまだ顔色が優れない様だ。ポッターの伝言に我を忘れて押しかけたが…非常識だったな」 どうやら反省しているらしいセブルスに、キョトンとするが、セブルスはお構いなしに言葉を続ける。 「先ほど、午後から出ると言っていたが、やめておいた方が良い。今日は一日しっかり体を休めて明日に備えろ」 やっとの思いで首をタテにコクコクと振った。 セブルスの言う事なら何でも聞きます!と言った感じだ。 (俺…やっぱりコイツの事好きだわ…) シリウスの心にハッキリ見えた感情。 この気持ち、どうしても伝えなくては!! 「スネイプ!」 立ち去ろうとしていたセブルスの足が止まり、クルリと振り返った。 もうその顔に険はない。 「その…明日から…」 明日からは仲良くしよう、というつもりだったシリウス。 好きだと言う前に、まず自分の言っている事を信用してくれる仲になりたかったからだ。 今のまま告白しても、十中八九いつもの悪戯だと思われ鼻で笑われるに決まっている。 「明日、から…」 それでも、中々言い出せない。 2人は仲良くしよう、と言われて、はいそうですか、という仲ですらないからだ。 (どどど、どうしよう!!) 「明日から、何だ」 セブルスの声が響いた。 シリウスの心が決まる。 「明日から、好きになってもいいですかっ!」 思わず敬語で叫んでしまった内容は、先ほど思っていた言葉よりもグレードアップ。 更に意味が分からない。 それを聞いたセブルスは驚いて目を見開いた。 数秒の沈黙。 そして。 「新手の悪戯か?」 とても冷静にそうコメントするとローブを翻して行ってしまった。 セブルスの脳には、この記憶は刻まれないに違いない。 「あああああ〜!!」 セブルスの立ち去る足音も消えたグリフィンドール寮で後悔大爆発中の男が1人。頭を抱えてのたうち回っていた。 「馬鹿だよね、実際」 「それを言っちゃあ可哀相だよ、ジェームズ」 聞こえてきた声に顔を上げると、いつの間にかいる悪友2人。 「いつからいた」 「ん、最初から?」 「ジェームズ、貴様!」 「あはは、まあまあ。で、シリウス君としてはどうするの?」 「何が」 「思いっきり失言だったね、あれは。これから、どうするの」 楽しそうに笑うジェームズとリーマスに、シリウスはスックと立ち上がって高々と宣言した。 「決まってんだろ!押しまくり決定!!1度や2度の失敗がなんだ!5度でも6度でも…!何度だってあいつが振り向くまで押しまくり決定!」 先ほどまでの態度はどこへ行ってしまったのか。 大層強気なシリウスに、悪友2人は大変満足。 明日はどんな楽しいことがあるだろう…と。 |
書いてなかったけど、全5回の予定です。セブさんは基本的に常識人です。シリウスの事は今のところ何とも思ってません。(いや、嫌いです)