△月×日

今日も今日とて、思いっきり玉砕したシリウス。
「好きだ!」と何度叫んでも、のれんに腕押し。
「愛してるんだ!」と実力行使で抱きつこうとすれば、目の前に杖。
最近ではすっかりセブルスも慣れた様子で、スルリスルリとかわされてしまう。

「シリウス君、空回り絶好調」
「…るせ。分かってんだよ」
「それでも諦めないんだねえ」
「…諦めれるかよ。殴られ様が、蹴られ様が大好きなんだよ」
「切ないねぇ…」













「…!…リ…!…ウス!!」

遠くで聞こえる叫び声。
何だろう、とシリウスが思うと同時に、それは来た。
「シリウス!何度呼ばせる気?!」
ドスン!という衝撃と、怒りまくったリーマスの声。
「グエ!」
思わず出た潰れた声も仕方のない事だと思った。

「ゲホ!ゴホッ…!何だよ、リーマス!!人殺す気かよ!」
「何度呼ばれても起きない君が悪いデショ」
「…ちっ」
全くその通りであったが、もう少し優しくしてくれてもいいのに。と思いつつ、そんな事を言ったならば、また酷いしっぺ返しが来るのが分かっていたシリウスは黙って着替えを始めた。
「あ、シリウス急いでね」
「なんで」
ふくれっつらでパジャマを投げ捨てたシリウスに、衝撃の一言。
「セブルスが君を訪ねてきてるからさ」

ボト。

思わず持っていた制服を落とす。
「…は!?いや、何…マジ?!…セブルス!?セブルス・スネイプ?!」
混乱したシリウスが、頭をワシワシ掻き乱しながら叫ぶ。
その様子をリーマスが笑って見守っていた。
「早くしなよ。好きな子を待たせるなんて最悪だよ」
「そそそ、そうだよな!!」
その話の真偽を問う余裕もなく、シリウスは落とした制服を拾い上げ、マッハで着替え始める。
ボタンはほとんど留めなかった。
ネクタイは首に引っ掛けただけ。
ズボンはちゃんとはいた。
そして、ジャケットをひっつかみ、部屋をすごい勢いで出て行った。
「恋する男ってすごいね」
置き土産の埃舞う部屋で、リーマスが1人呟いた。



途中で数人にぶつかりつつ、シリウスはグリフィンドールの扉前までやってきた。
ここを開けるとセブルスが待っているハズである。
ドキドキと高鳴る胸を押さえつつ、シリウスは扉に手をかけた。

セブルスの用事が、果たし合いの申し込みでも何でも構わない。
最近ロクに会話もなかったのだから。
(それはシリウスのせいなのだけれど)


ギ!と開いた扉の隙間から、制服のローブが見えた。
ギギ…と開けると、その音に気付いたその人物が振り返る。
緑のネクタイ。
黒い髪。
間違えるはずもない、セブルス・スネイプその人であった。

「セ…セブルス…!おはよう…」
後ろ手で扉を閉めながら、ギクシャクを挨拶をする。
振り返ったセブルスは、苦虫をつぶした様な顔をしている。
「…なんだ、その格好は」
「え」
慌てて着替えたその格好は、セブルスが大層嫌うだらしのない格好で。
よくよく見れば、ボタンもかけ違えている。
「あ…その、急いでたからさ!それより、どうしたんだよ?たずねてくるなんて初めてじゃんか!」
「…ちょっとな。あ〜その前に」
バツの悪そうな顔をして、視線を逸らしたセブルス。
何だ?と思っていると、そのセブルスが近づいてきた。
え。と思っていると、その手が自分に。
いや、正しく言うと、自分が着ている服に。
そのシャツの、かけちがえたボタンに。
「セセセ、セブルス?!」
「…この、だらしない格好をなんとかしろ」
ピ、とボタンを全て外すと、スイスイと正しくボタンをかけてくれる。
おまけに、ネクタイも綺麗にしめてくれた。

「あ…その…サ、サンキュ…」
「私がだらしない格好が嫌なだけだ」
ス、と名残なく離れていく指に未練を感じつつ、しめてもらったネクタイを見る。
「…上手だな、お前。人のネクタイって難しいだろ」
「慣れだ」
「…慣れ?!」
「だから、どうしても気になるものだからつい人のを直してしまうのだ」
「誰の!」
「そりゃあ、知っている人のだな。先輩やスリザリン寮の奴らとか」
初めて知る事実に、シリウスは確実にジェラシーを感じた。
スリザリンの奴らめ…!と。


「そんで…何だった訳?」
しめてもらったネクタイを大事そうにさすりながら聞く。
残っているはずもないぬくもりがある気がして。
「ああ…そうだったな。実はな…シリウス」
シリウス!確かに今、シリウスと!!
あのセブルスが!
感動に震えていると、不思議そうに首を傾げたセブルスが。
「シリウス?」
再びその名を口にした。
「お、おう!何だ?!」
高鳴る胸を押さえる事が出来ずにセブルスを見ると。

セブルスは笑っていた。
「おかしなヤツだ」と言って、笑っていた。

「セ、セブルス…もしかして…その。俺、期待しちゃってもいい訳?」
「シリウス」
ニッコリ笑ったセブルスの顔。
その可愛い口から出てくる自分の名前。

ああ、神様ありがとう…!



感謝するのが遅かったのか。
それとも、その勘違いにお怒りになられたのか。


















「シリウス〜!!いい加減に起きろ!シリウス!」
鬼の様な剣幕に、目を開けると同時に、腹部に衝撃。
「おえ!!」
咽ながらも見ると、腹の上にリーマス。
肘が腹に刺さっている。
「…すげぇ起こし方だな」
「だって起きないんだもん。文句あるなら1回で起きなよ」

「…あ〜夢かあ。上手すぎる話だと思ったよ」
「どんな夢?」
「話すと正夢じゃなくなるっていうから話さない」
「へ〜?」
「お、脅されようと、殴られようと話さないからな!!」
「ふぅん。セブルス絡みなんだ」
ギクリと体を強張らせたシリウスに、リーマスは笑う。
「分かりやすすぎるよ、君」





そして朝食大広間。
「セブルス!セブルス!!」
今日も今日とて、セブルスを追い掛け回すシリウスの姿。

その首に掛けられたネクタイは、ぶら下がっていただけだとか。
それをセブルスが直してくれたりはしなかったとか。


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ここまでを3話目に入れたかった…。
てかいまだにセブルスに好きになってもらえないシリウスさん。ハッピーエンドは期待しないで下さいね(笑)「そんな馬鹿な!」