△月△日 朝食中の雑談

「思うにさ」

口をモグモグさせながら話し出したのはリーマス。
目の前に座るジェームズは顔を上げたけれど、
今日も朝から玉砕したシリウスは机につっぷしたまま。

「セブルスって押しに強いタイプだよね。むしろ地道な努力をした方がいいんじゃないの?」
セブルスの話題だと知るやいなや、ガバリと起き上がったシリウスが目を据わらせて繰り返す。
「地道な努力?」
「そう。シリウスの気持ちを分かってもらう前に、シリウスを分かってもらなきゃ!今のセブルスにとってシリウスは単なるグリフィンドールの天敵だよ」
「なるほどなあ〜」
ノンビリと相槌をうつジェームズの隣で、シリウスが凶悪面を曝す。
「…どうすりゃいいってんだよ」

「そうだねぇ…まずはセブルスに合わせてみたら?」

それはいい手だね、と賛成するジェームズ。
シリウスは1人不思議顔。

「…合わせる?」





△月△日 放課後

朝、リーマスに言われた事が気になって、シリウスは一日セブルスを追いかける事も忘れていた。
「合わせるったって…どうすりゃいいんだか…」
は〜ああ。とため息をついて伸びをしながら前方を見れば。
そこには愛しのセブルスの後姿。

条件反射か、愛の賜物か。
とにかくシリウスはセブルスに向かってダッシュした。
「セブルスッ」
呼びかければ振り返ってくれる。
でも、シリウスを認識したセブルスの顔は酷い。

「シリウス・ブラック。グリフィンドールでは廊下を走らない、という事すら教えてもらえないのか?気の毒な事だ」
厭味たっぷりに投げられる言葉。
それにムカッときたシリウスが言い返そうと口を開きかけた。
「…」
口を半開きにして固まるシリウスに、セブルスは不思議そうに首をかしげる。
「?何だ?…ああ、それから、廊下では騒がない、という事も教えてもらうといい。…教えてくれる人がいるのなら、の話だがな」
言いたい事だけ言うと、クルリと踵を返すセブルスを慌てて引き止める。
「あああのっ!」
ギュ、と掴まれたローブを嫌そうに振り返る。
「…何だ。用事があったのか。さっさと言え、私は忙しい。そしてそのローブを離せ」
「あ〜なんつうか…そうだよな、廊下を走ったり、騒いだりするのは良くないよな…と思って。悪い」
シリウスの口から出てきた思いがけない言葉の数々に、セブルスは目をまん丸にして驚いていた。

シリウスは、やっと朝のリーマスの言葉を理解出来た事に満足だった。
完璧常識人間のセブルスにとって、シリウスは理解できない人間でしかないのだから。
だったら、常識に則った行動をすれば、セブルスも『シリウス』という人間を見てくれるのだと。

「…別に、廊下は私のものではない。私に謝られても困る」
「うん、でもセブルス不快だったんだろ?ゴメンな。今度からは気をつける」
「…どういう心境の変化か知らぬが、良い事だ」
セブルスの顔から少し険が取れたのをシリウスは見逃さなかった。

「わあ…効果テキメン…」
「?」
「あ、や!何でもね!ところでセブルスどこ行くんだ?図書館?俺も一緒に行っていい?」
「用事があるのなら行けばよいだろう」
「あ〜じゃなくて、セブルスと一緒にいたいからさ。邪魔しないからさ。いいだろ?」
ニッコリと笑ってお願いポーズをとるが、セブルスの顔はピクリとも動かずに口だけが動いた。
「断る。そんなデカイ図体が傍にいるだけで落ち着かない。それに、図書館とは勉強するための場所だ」

じゃあな、の一言もなく、セブルスはローブを翻して図書館に向かって歩いていった。






「…シリウス、帰ってこないね」
「うん…またどっかで玉砕して落ち込んでるのかな」
部屋でノンビリとそんな会話をしているBGMに、地響き。
「…帰ってきたね」
「うん、今回は何だろう」

「リーマス!ジェームズ!!聞いてくれ!!というか、ああ、リーマスありがとう!!」

興奮状態で入ってきたシリウスから一部始終を聞いた2人。
「次回は、是非とも一緒に歩くぜ!!」
グッと握り拳を作って燃えるシリウスに、2人はちょっと呆れ顔。


「…会話できただけでこうも嬉しいんだね」
「先の長い恋愛だよ」





小さな小さな前進だったけれど、シリウスにとってはとても大きな前進。


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やっと少し仲良くなりました。仲良くなったばかりですが次回ラストです。2人は恋に落ちるのか?!(笑)